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第5章 5

既に出逢って一ヶ月は身体の関係を持たないという教えは破ってしまっている。

『マニュアル本は、しょせんマニュアルだし……時と場合に依るよね、こういうのって……』

本に謝るような、自分に言い訳するような、煮え切らない思いが心の底に澱んでいた。

自分の信じる道を行くならもう本を読まなければいいのに、またページを捲ってしまうのは彼女らしい。
『夢を追う男はあなたを追わない』
『つまらない男の方がいい』

そんなアフォリズム的な言葉に鼓動が高まった。
脱サラして自分の会社を持ちたいと語った海藤を素直に素敵だと思ったことを嘲笑われた気持ちになる。

「馬鹿みたい……」

あやみはしおりも挟まずに『いつかは結婚できると思い込んでいるあなたへ』を閉じ、テーブルの上に置いた。