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恋こころ
第1章 お家へ帰ろう
腰に回していた手を解き、両手で頬を包む。腰を少し落として真純と目線の高さを合わせ、正面からその瞳を捕らえた。
「斎藤真純になってくれる?」
「……っ」
真純の形の良い眉がキューンと下がる。頬の赤みが増していく。大きな瞳を覆う透明な膜はあっという間に盛り上がり、留まる間もなくホロホロとこぼれ落ちる。親指で何度拭っても、後から後から濡れる頬。
「ふっ、ぅぅ……」
嗚咽が洩れ、真純が本格的に泣き始めた。
額を合わせ
「ますみ」
柔く名を呼ぶ。
「いや?」
そう聞くと断れないと知りながら、聞いた俺は相当卑怯だ。
案の定、真純は直ぐに首を左右に振る。
「や、じゃない、です」
「じゃ、良い?」
少しの間、言葉に詰まり
「……はぃ」
真純が小さく頷いた。

腹の底から沸き上がってくる熱い何か。嬉しくても胸が苦しくなるという事を初めて知った。

額を離し、下から真純を覗きこむ。
「ありがとう」
気持ちを伝えるので、限界。
掬い上げるように唇を重ねた。
「んっ!」
角度を変えて舌を滑らせ、歯列をなぞる。肩を押されて、離れないよう右手を後頭部に滑らせた。
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