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恋こころ
第1章 お家へ帰ろう
「俺と結婚して下さい」
「っ……」
瞬間大きくなった瞳。また涙で潤んでいく。
困ったような下がり眉。透明な膜は直ぐにその張力の頂点を越え、朱に染まった頬を伝い落ちる。
「ふっ……ぅう」
抱き締めたいのを堪えて両手に力を込めた。そこから右手を離して真純の頬を包む。親指の腹で下目蓋をそっと拭った。
次々と溢れてくる涙。時々それを拭いながら真純の言葉を待つ。

さっき了解を得たはずなのに、柄になく緊張する。心臓、すごいな……

渡した箱を両手でギュッと包み、時折しゃくりあげながら泣いていた真純。しばらくして嗚咽が収まると、鼻を啜って右手で自分の頬を拭った。目蓋を閉ざし、小さく息を吐く。口角がキュッと上がって、目蓋が開いた。涙に濡れた瞳で俺を見あげてくる。
「た、拓真さん」
俺の名を呼んだ声が震えている。
「……うん」
「よろしく、お願いします」
ゆっくり言葉を紡ぎ、また涙を溢れさせた。

胸が、熱い……
嬉しくて、嬉しくて堪んない。

両手で頬を包んで涙を拭う。赤く潤んだ眼を捉え
「うん。こちらこそ、よろしくね」
微笑み掛けると、真純の顔がくしゃりと歪んだ。
「はぁ、い……」
コクンと頷いてしゃくりあげる。形の良い額に口づけて、小さな頭を抱き寄せた。
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