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恋こころ
第1章 お家へ帰ろう
「美味しーい!」
ただでさえ大きな瞳をもう一回り見開いて、真純が嬉しそうに声をあげた。その手には桐生さんに頂いた長野の白。食事と合わせるのには少し甘みが過ぎるが、タルい訳じゃない。スッキリとしたブドウ本来の甘味。フルーティーな香りといい、真純の好みのど真ん中。

何というか……腹が立つ。
何故うちみたいな食事メインの店でホールの片手間みたいにシェーカー振っているのか……
時々閉店後に、社長とその友人達を相手に結構本格的に振っているらしい。社長と桐生さんの関係もよく分からない。

上機嫌でグラスを傾ける真純を見つめ、桐生さんの真純に対する愛情の深さを思う。

『無償』

その言葉が一番しっくりする。
二人の関係は真純と付き合い始めた頃に桐生さんから直接聞いた。だからと言ってどうしてそこまで思えるのか……
いつも穏やかに微笑む桐生さんには分からない事が多すぎる。謎だらけ。
無意識に息を吐きそうになって
「お代わりしても良いですか?」
真純の声に飲み込んだ。
いつの間に飲み干したのか、空になったグラスの足に両手を添え、真純が俺を覗き込んでいた。
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