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恋こころ
第1章 お家へ帰ろう
「大丈夫、ですか?」
「平気だろ。人の心配してないで、早く帰れ」
まるで追い払う様に手を払われる。
「今日だろ?姫ちゃん」
「……はい」
「さっさと片付けて、沈めて来い」
マグカップを無造作にテーブルへ戻し、画面に向き直る。
「お前今、悶々とした色気だだ漏れてて色々迷惑。閉店時間を過ぎてもお客の帰りが鈍いのはお前のせいだ」

は?
何言ってんの?

「姫ちゃんに注いで発散しろ」
「……」

あーソレ?
俺のせいじゃないし。
こんなに真純に触れないどころか会えもしないなんて初めてで、真純に沈みたいと切望してんの俺だから。

「遅刻はするなよ?」
いらない一言を付け加えて佐伯さんが目だけでチラリと俺を見た。またシッシッと手を払われる。
「お先に失礼します」
あえて何も応えず挨拶だけをして部屋を辞した。
厨房を覗くと桐生さんに細長い紙袋を渡された。
「河合さんに、引っ越し祝い」
「あ、これも渡して下さい」
横から金場さんにも同じ様に紙袋を渡される。二人に丁寧にお礼を伝え、店を後にした。
駅まで歩いても10分とかからない。時刻表を思い返し、歩くピッチを上げた。
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