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星と僕たちのあいだに
第9章 涙のゆくえ
 
何物にもかえがたく留美子を愛していた。
だが当時の滝沢に、妻の死を憂うことは許されなかった。
直樹と二人、生きていかねばならない。
まだまだ小さな直樹を前にして、悲しんでいる間などなかったのである。

妻を失った放心が、焦りに変わりだしたのは事故から三ヶ月も経たないころだった。
何があろうと直樹を手離さないという滝沢の強固な決意が、結果的には、妻がこれまで果たしてきた役割の重要さを彼に思い知らせることになる。

留美子まかせであった育児や家事といった日常生活のすべてが、滝沢に重くのしかかった。
直樹の生活リズムの安定を考えれば、毎日定時に帰宅して、できるだけ手づくりの食事を与えたい。
仕事、子育て、家事をこなさねばならない父子家庭の父親の毎日は、一日二十四時間で足りるわけもなく、肉体的にも精神的にも、あらゆる面で滝沢は追い込まれた。

働きかたを見直し、研究職をあきらめて比較的就業形態が自由な営業部に転属した。
だが、畑違いの仕事が飲みこめず、上司や同僚からはよそ者扱いで、詳しい商材知識だけではまったく数字をつくれなかった。
社内をたらいまわしになり、やっと今の部署に落ち着いたころ直樹の異変に気づいた。

言葉を覚えはじめる年齢を過ぎても、直樹は発語が少なく表情が乏しいと保育士に指摘された。体に触れられることも嫌がるのだという。

たしかに直樹は大泣きもしないが、笑うことも少ないような気がした。
保健所に相談を持ちかけ専門医にも診せたが、知能に問題はなく健常であると診断され、医師からは暗に家庭での幼児虐待を疑われた。
医師への怒りと同時に、滝沢は己の限界を感じた。


 
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