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星と僕たちのあいだに
第9章 涙のゆくえ
 

『ごめんね、お父さん……』

麻衣の背にそっと手を添えた父は、麻衣の呼吸を整えるように静かになでた。

『お前が謝ることなんて何もない』

父はしっかりと麻衣を抱きしめた。
決して声は出さなかったが、父が泣いているのが麻衣にはわかった。
父のシャツの胸元を、数滴のしずくが湿らせたからだった。

麻衣が顔を上げると、父は空を見上げていた。
目線の先の澄みきった青空に、鳶(とび)が高く舞っていた。

『人生に秘訣はないんだ』

ポケットからハンカチを出して、汗をぬぐうようにして涙をふいた父は、麻衣の体を母の墓碑に向けた。

『思い通りにいかなくて流す涙は、
 もっと良くなりたいっていう
 意識の表れなんだよ。
 もっといい女に……いや、
 もっといい人間になりたいって、
 麻衣をそんなふうに思わせる
 白石さんはやっぱりいい男なんだな』

納得がいったというような口ぶりで父は言った。
麻衣は何度かうなずいてから、小さくかぶりを振った。

『いい人よ。だから、
 あの人は幸せにならなきゃいけない。
 子供のできない私は、
 あの人を不幸にするわ』
 
『おいおい、そんなこと言ったら
 白石さんに失礼だよ。
 彼は何もかも知った上で、
 麻衣を求めてるんじゃないか。
 子供なんか関係ない、
 麻衣と生きていきたい、
 こいつじゃなきゃダメだって、
 そう思ってるはずだよ。
 でなきゃ、
 男は結婚なんてしようと思わないよ』

アゴをひいて陽射しにしかめ面をする麻衣にストローハットをかぶせると、父はすまなさそうに手を合わせ、墓碑の上のハンカチを手桶の水で絞りなおして自分の頭にのせた。


 
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