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美しい狼
第7章 生まれた狼
僕の両親は
交通事故で死んだ

僕を生んで
退院した帰りだった

僕が助かったのは
母さんが僕を庇うように
覆い被さって守ってくれたから

でも
一緒に死にたかった

顔も声も温もりも知らないけど
僕を守って死んだのなら
きっと
愛してもらえたはずだ…

だけど、もう誰もいない。


事故の後
僕は施設に預けられた

そこに
藤沢慎吾が現れた

母さんと昔からの知り合いだと
僕を養子にしてくれた

藤沢は
日本だけでなく
海外にも企業を展開する
超大型チェーン店のトップだった

藤沢グループと言えば
誰もが知ってる名前だ

僕は
突然
その跡取り息子になったのだ

独身で子供のいなかった藤沢は
もし、自分の身に何かあれば
全権僕に託すと
遺言を作成して

もちろん
藤沢の親戚一同、グループ関係者
全てのものが
僕に敵意を向けた
狙っていた莫大な財産も地位も
突然
どこの馬の骨かも知らない
赤ん坊に奪われたのだから

僕は成長していくにつれて
望まれていない人間なのだということを知る

欲と権力にまみれた
汚い大人の世界と同時に

藤沢は決して
世間一般的な
親子関係を築こうとはしなかった

愛情を注ぐ代わりに
後継者として育てる為の
ありとあらゆる教育を施した

「生きていくためには
 手段を選ぶな
 側に置く人間を間違えるな
 賢く生きろ」

これが藤沢の口グセだった

命を狙われることや
僕に取り入って財産を狙ってくることなんて
日常すぎて
おかげで寂しいなんて感情が
わく暇はなかった

どう生きるか

毎日そればかりだった

聞いて驚くなよ
まだ僕4才だよ
子供とお年寄りには優しく
そんな言葉、糞くらえ

人間の欲なんて
果てしない
子供だろうと赤ん坊だろうと
私利私欲の為になら
鬼になれるんだ



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