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美しい狼
第8章 遠吠え
あの日以来
藤沢との距離が少しではあるが
縮まった

藤沢が休みの日は
ごく稀に
映画や食事に連れて行ってくれたりもした

子どもながらに
不器用な愛情は
感じていた

でも消えない疑問

なぜ
僕を養子にした?


疑問は消えないまま
8才になっていた

相変わらず
経営者になるための難しい勉強や
相続法
詐欺師のやり口など
高等学問の習得は続いた

子どもだから分からない
なんて
甘さが通用するような藤沢ではない

分かるまで
理解して落とし込むまで
徹底的に叩き込まれた

ある日
藤沢の書斎へ
借りていた六法辞書を返そうと
部屋に入り
机を見ると

綺麗な女の人と
楽しそうに微笑んでいる
藤沢の写真があった

そこへ
丁度藤沢が戻ってきた

「父さん、この写真の人だれ?
 キレイだね」

僕の
何気ない
一言で全てが
壊れていくようだった

藤沢は
凍り付いたような表情で僕を見つめ

突然
抱きしめられた

声は
聞こえなかったけど
多分
泣いていたと思う
身体を振るわせて
嗚咽を堪えていた

なぜ
急にこんなことをするのか
と突然すぎて
意味が分からなかった

僕はただ
黙って
藤沢の腕の中で
じっと息を潜めていた

そして
これが
藤沢との
最後の思い出となった
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