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美しい狼
第12章 窓越しの紫陽花
梅雨が始まった
朝から
シトシト雨粒が落ちる

季節ごとの花が咲く庭には
紫陽花が雨にうたれて
光っている

「おい鈍感女!
 膝枕!」

「はいはい
 要様」

要様の重みを感じながら
柔らかく綺麗な髪を
指に絡ませ遊んでいると

「俺ってさ
 モテるし
 何でも出来ちゃう男なんだよね」

「…突然何言い出すんです?」

「女に不自由しないし
 この年で
 色んな経験積んで
 普通とは違う生き方してる

 誰にも
 何でも負けない自信がある

 お前が来るまではさ
 女なんて皆一緒で
 ヤったら終わり
 相手の気持ちなんか考えもしないで
 捨ててきた
 だから憎まれようが
 刺されようが
 どうでも良くて
 その場しのぎの快感さえあれば良かった
 ハッキリ言って
 お前以外の人間に対して
 何の感情も沸かないし
 ゲス野郎なんだ俺

 でも
 お前とsexしたいのに

 嫌われるのが怖くて
 出来ないんだ

 夏目、お前のこと抱きたいよ
 めちゃくちゃに抱いて
 お前の全てを手に入れたい

 けど
 いざとなると拒絶されるのが怖くて
 臆病になる
 お前の前だと
 調子が狂うんだ

 今すぐに
 俺を受け入れろなんて
 言わない
 好きになれとも言わない

 もし
 俺の抑えが効かなくなって
 我慢できずに
 お前に触れたとしても
 
 嫌うな………

 俺の前から居なくなるな」

「……無茶苦茶です」

「ぁあ。そうだな
 無茶苦茶だ……」

「私は……
 どこにも行きません
 要様のいる場所が
 夏目の場所ですから」

柔らかな雨の音がする
雨音に紛れて
私達は
優しいキスをしました
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