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第6章 九月　身も心も濡れた夜

　仕事中は夢中で気付かなかったが、慣れない仕事をしたせいか、ぐったりと疲れてしまった。
　そんな知代を、志穂をはじめコンパニオン達は労ってくれて、一緒に食事に連れて行ってくれた。

　新しい友人が増えたようで、知代は嬉しかった。

　食事が終わり、志穂が車で送ってくれることになった。

「今日はお疲れ様。本当にありがとうね」
「いえ、慣れない仕事で、皆さんに迷惑かけてないかと」
「全然。皆、知代ちゃんのこと気に入ってくれてたわよ」

　そういうふうにストレートに言われて、知代は照れる。
　志穂は微笑ましく、知代の純粋さを見ている。

「あ、知代ちゃんて、実家に住んでるんだっけ？」
「あ、はい」
「そっか。もしよかったら、近くに温泉があるの。寄っていかない？
　今日のお礼も兼ねて、お姉さんがご招待するわよ」
「温泉ですか？」

　知代は、風呂好きで温泉好きだ。
　今日の会場の近く、お台場に温泉施設がある、と聞いたことがある。

「時間が遅いから、お泊りでも大丈夫なら、行ってみる？」
「いいんですか、お金…」
「いいのいいの、気にしないで。私のコンパニオンは趣味みたいなものだから」
「じゃあ、いいですか？　行ってみたいです」
「オッケー。じゃあお家に連絡しておいてね。すぐ着くから」

　志穂は車の進路を変更した。


　少し走ってすぐ、お台場の温泉施設「御江戸温泉」に到着した。

　フロントで二人分のお金を志穂が出してくれる。
　お礼を言うと、笑って背中を押して、更衣室へと案内してくれた。

　しかも志穂は、宿泊用に個室を取ってくれた。
　個室以外にも、大広間に並べて敷かれた布団で寝るか、ズラリと並んだリクライニングチェアで仮眠を取るかはすることが出来る。
　どちらも女性専用スペースもあるが、落ち着いて寝るのは難しいかもしれない。

　志穂は、迷わず空いていた個室を取った。
　二人分の入浴料に、個室の値段。
　さすがに知代が申し訳なく思って、少しでも出そうとしても、志穂は受け取ってくれない。

「じゃあ、お風呂上りに知代ちゃんにビール奢ってもらおうかな」

　志穂は笑って、大浴場へと知代を連れて行く。