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知代の性活
第9章 十二月 歌うためなら、性を、体を
 時間は少し遡る。
 夕方の開始にあわせて、知代達が店に入り始めた頃。
 『AMカフェ』の地下ではもうひとつのライブが始まろうとしていた。

 薄暗い店内に設置された大きなモニター。
 いくつかに分割された画面の中に、更衣室で着替える知代の姿が映っていた。

 他にも女性出演者が待機している控え室、そしてトイレまで。

 男性出演者がいる以外の全ての場所に仕掛けられた隠しカメラの映像がモニターに映し出されている。

 その前に並んでいる客の中には、先日知代からチラシを受け取った男達も交じっている。

 ここは『AMカフェ』の裏の顔。会員制の裏の店。
 その名を『AGカフェ』という。「AG」は「アンダーグラウンド」の略。
 地下アイドルというものはいるが、それよりもさらに地下深くで行われるライブを楽しむカフェ、と言うのが名前の由来。
 アダルトグッズやDVDの販売の他、こうやってライブ出演者の盗撮映像を楽しむことが出来る。
 
 男性出演者は、表の店の営業で女性客を取り込むため。そして女性出演者へのカモフラージュのため。
 安心して出演させ、気の緩んだところをカメラに収めるための、目くらましだった。

 知代が着衣を脱ぎ、下着姿になった。
 白いワンピースから透けないようにと言う配慮からか、知代の下着はシンプルな白一色だった。

 その清楚な姿に観客から溜め息が漏れる。
 
 知代が着替え終わると、交代するように別の女性出演者が入って来る。

 そうやって観客は次々と行われる着替えを覗き見し、通常のライブを見る間も下着姿やトイレでの仕草を思い浮かべては下衆な欲望を満足させた。
 歌い終わり、汗ばんだ顔で控え室で休む少女の顔は、そういう目で見れば十分にいやらしかった。

 オーナーは大枚をはたいて楽屋にシャワールームを作った。
 もちろんそこにもカメラが仕掛けてある。

 『AGカフェ』に訪れた客の最後にして最大の楽しみだった。
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