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知代の性活
第10章 一月 乱れる姿を自分で見ながら
 知代の声は続木が聞いても綺麗な声だと思えた。
 
 ただ高い音が続くと苦しいらしく、眉間にしわを寄せ、そして顎が上がっていく。
 そうなるともう、いい声は出ない。
 トレーナーからも普段指摘されている、知代のクセだった。

 容姿で全く勝負が出来なかった続木は、その分歌唱力を磨くことに余念がなかった。
 結果として売れはしなかったものの、今でもその時に培った知識は頭の中に残っている。

 知代にせがまれて、つい歌って見せたが、若い頃には縁のなかった煙草を嗜むようになったこと、日頃の不摂生などがたたって、ブランクがあるとはいえ、それにしても酷い声だと我ながら情けなく思った。

 それでも知代は感動したらしい。

 冴えない小太りの小男から、こんなに深みのある声が出るなんて。

 もちろんそんな失礼なことを言ったりはしないが、知代の感動を言葉にすれば、要はそういうことだ。

 思い切って歌ったことが功を奏したか、知代は続木の話を熱心に聞くようになった。

「嬢ちゃんは体が硬い。だから声が伸びきらん」
「あの…浅山、です」
「構わん。どうせ今日だけの関係だ。名前なんて覚えたところで仕方ないわ」
「はあ…」
「体は楽器だ。体が硬いから音が響かん。特に股関節。ここが硬いと声は伸びん」

 股関節、と繰り返して知代は立ったまま股割りのように足を開いていく。

 確かに硬い。

 知代は続木に付き合ってもらって、ストレッチをすることにした。
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