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知代の性活
第10章 一月 乱れる姿を自分で見ながら
 服を取り戻している余裕はなかった。
 ただ見られたくない一心で駆け込んだ。

 これからどうしよう…

 知代は絶望に落ちながら、必死に頭を働かせる。

 とりあえず、郵便配達に気付かれるのは回避できた。
 しかし服は外だ。Tシャツとジャージ、そして下着は自動販売機の裏。
 ここまで来る時に着ていた服は別の部屋だ。

 気を落ち着けようとぐるりと部屋を見渡すと、先程までいた部屋と同じ造りだ。どうやら隣の部屋らしい。
 なら隙を見て隣に駆け込めば、どうにかなるかもしれない。
 ジャージや下着は諦めなければいけないかもしれないが、こんな裸同然の姿でいれば確実に犯される。

 何とか隣の部屋に行ければ…

 しかし防音扉を閉めてしまった部屋の中にいては外の様子は分からない。
 扉のガラス窓から外を窺おうにも、入り口のほうまでは見えない。
 
 今の知代はブラジャーしか身に付けていない。
 そんな姿で状況も確認せず外に飛び出すのは危険だ。
 
 どうしようかと迷い、郵便の受け取りなど大した時間もかからないはずだ、動くなら今だ、と決意をし、重い防音扉に手をかけようとした瞬間、扉のガラス窓の向こうに立つ続木の姿が見えた。

 遅かった…!

 知代は失敗を悟りながらも、部屋に入ってくる続木から少しでも距離をとろうと、部屋の隅へと後退る。
 とはいえ狭い部屋だ。逃げ場などないに等しい。

 知代は精一杯気丈に振舞って、この窮地を脱しようと心に決めた。
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