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知代の性活
第12章 三月 夢を叶えた少女
 知代は歌いながら、様々なことを思い出す。

 何度も男に犯され、犯されるたび体が変化し、また犯され、いつからかその行為を知代自身も求めるようになった。

 「清楚」の籠に守られていた、知代の体の欲望は、その籠の中で大きく育った。
 籠から飛び出しても、必ずそこに帰ってくる。

 その籠は、知代が出会った人達が築いた、知代の居場所。
 それがなければ、知代はどこまでも欲望のまま飛んでいく、淫らな鳥になっていたかもしれない。


 義兄との関係は、きっぱりと断ち切った。

 心安らぐ恋人が出来、体も心も許せる友人も得た。

 歌をたくさんの人に聞いてもらえるようになって、念願だったCDも出せた。


 これ以上何を望むだろう?

 知代は倖せだった。
 
 歌えれば。歌ってさえいられれば。



 和也に「愛してる」と囁き、和也のために歌を作る。
 
 和也が大好きだ。和也と体を重ねるのがいちばん気持ちがいい。
 どれだけ男に抱かれても、和也にしか見せない顔がある。


 どのくらい気持ちが届いているだろう?
 言葉はなんてもどかしいんだろう。

 
 同じ言葉でも行為でも、百万回でも繰り返せば、もっと違う存在になるだろうか?


 きっとなる。


 知代はそう信じている。


 だから今日も歌う。
 今日まで何度も繰り返してきた歌を。

 和也のために作ったラブソングを。
 



 その曲は、その年のナンバーワンヒットソングになった。





 
「あん…和也、和也…! 大好き…和也…!」

 そして、恋人にしか聞かせない声で知代は歌う。




 知代の性活・完
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