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知代の性活
第5章 八月 初めて喉を通る感触
 歌手を目指す知代は、ボイストレーニングに日々励み、時おり路上や、小さなライブハウスで歌っている。

 高校卒業後、バイトに励んで新しいギターを買った。
 薄く赤く染められたアコースティックギターだ。

 小さな頃、歌手を志した頃からピアノを習った。
 いつか作曲が出来るようになりたい、弾き語りをしてみたい、という思いがあった。

 高校生の頃から、少しずつ路上ライブを始めた。
 ずっとやってきたピアノの腕を生かして、オリジナル曲も作った。
 
 この頃、ギターも始めた。
 キーボードにアンプと、荷物が多くなる知代は、高校生だったこともあって路上ライブは近場でしか出来なかった。
 車でもあれば、と思っていた頃、ギターの練習を始めた。
 高校の軽音部にも入り浸り、しばらくギター漬けの生活を送った。
 初めてギターで一曲、弾き語りが出来たときの嬉しさは、今でも覚えている。

 ギターケースひとつを背負い、どこでも演奏出来るこの楽器は、知代の活動範囲を広げてくれた。

 
 この日も、ギターケースを背負い路上ライブに向かう。
 高校卒業後、バイトを頑張って、新しいギターを買った。

 薄い赤に染められた、アコースティックギター。
 そのギターのデビューライブだ。

 新しいギターにワクワクしながら、目的地に着く。

 今日選んだのは、墨田区内のとある駅。
 駅を出るとコンビニがあり、その前に小さな公園がある。

 そこが今日のライブ会場。

 スタンドを立て、看板を設置する。
 歌う時も、知代は本名のままだ。芸名を考えたこともあったが、どれもしっくり来なくて本名で活動を続けていた。

 初めての場所なので、曲数は少なく、でも大好きな曲を選んだ。

 カバー曲が二曲。
 オリジナルが二曲。

 選曲は、しっとりと聞かせられるものを選んだ。

 福山雅治の「squall」
 華原朋美の「I’m proud」

 最新曲ではないのは、幅広い世代が知っている名曲を選んだつもりだった。
 四曲歌って、合間や前後にトークが入れば、これで三十分ほどになる。
 時間的には十分だった。
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