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知代の性活
第5章 八月 初めて喉を通る感触
 キャリーバッグからタオルを取り出す。
 汗を拭く用の小さなタオルでは、体の水滴を全て吸い取ることは出来なかった。

 仕方がない…すぐ乾くよね。

 それまでは、ここにいよう。
 知代がそう思った時、四十代くらいの男性が声をかけてきた。

 工事中の場所に入って怒られるのかも、と思っていると、男はタオルを差し出してくれた。
 先程、知代のライブを観てくれていたのだという。
 突然の雨に濡れながら知代がここに駆け込むのを見て、タオルを買ってきてくれたそうだ。

 知代は、この男性が、ホームページのお知らせを受け取ってくれて、CDは売っていないのか、と聞いてくれたことを思い出す。
 残念ながらまだCDを作るほどの余裕は金銭的にない。
 それでも男は応援する、と言ってくれた。

 知代はありがたくタオルを受け取り、体を拭く。
 男は、新堂という名前だった。

 中年太りか、でっぷりとお腹が出て、少し頭も薄くなっているが、人がいいのか、ニコニコと知代を見ている。

 知代は少し困ってしまった。
 男に悪気があるのかないのか、見られている知代は、下着が透けている。

 それを言うのも恥ずかしい気がして、タオルで拭くふりをしながらさり気なく体を隠した。
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