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その瞳に…
第23章 小さな秘め事
「どうしました、佐々木さん」

大河は、呼び主の名前を言いながら、絵麻の前に立つ。

「先生、ちょいしゃがんで」

ちょいちょいと、しゃがめとジェスチャーする絵麻に、大河も不思議そうな顔をしながら、言われた通りしゃがむ。

「ね、先生」

絵麻は、周りに聞こえない様に、ポソポソと小さな声で話しだす。

「間違ってたらごめんね。あのさ、舞奈の彼氏って、先生だよね?」

突然の衝撃に、舞奈と大河は一瞬固まる。

舞奈は絵麻に言葉に、全身からぶわっと汗が吹き出すのを感じた。

(え?絵麻?え?)

舞奈は上手く思考が回らず、頭の中は混乱するばかりだった。

短い沈黙。

先に破ったのは、大河だった。

「何故、その様に思ったのですか?」

大河の声は、小さくはあったが、授業する時と変わらず、冷静だった。

「あ、否定しないって事は、やっぱそうなんだ」

大河の言葉に、絵麻は二人の交際を確信する。

大河自身、努めて冷静であろうとしたが、やはり少しの動揺は隠せないでいた。

佐々木絵麻。

明るく、交遊関係も広く、授業態度も悪くない、成績もそこそこの、何処にでもいそうな女子高生。

舞奈から聞く絵麻は、やる気がなだけで、本当は凄く頭が良く、回転も早い。

たまに、物凄く鋭いときがあり、駆け引きを好み、ボードゲーム等が好きらしい。

けれど、普段はそんな事、おくびにも出さないで過ごしている。

サックりと舞奈から聞いていた情報を思いだし、大河は背筋に汗が流れるのを感じる。

(今時の高校生は皆こんななのか…?)



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