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その瞳に…
第25章 初めての訪問
 大河は、着けていたネクタイを外し、鞄からサイフを取り出した。

 「舞奈がお風呂入ってる間に、そこのコンビニで買ってくるよ。何か指定は?」

 舞奈は流石にそこまで甘える訳にはいかないと、大河を止める。

 「あの!一日位なら大丈夫ですから!」

 しかし、大河は舞奈が止めるのもかまわず、さっさとリビングから出ようとする。

 舞奈はそれを追いかけ、バスルームの前で大河の袖を掴んで、阻止する。

 「あの、本当に大丈夫ですから・・・」

 啓介の提案といえど、いきなり大河の家に押しかけているのだから、これ以上迷惑はかけられない。

 大河は舞奈が何を思っているか解り、優しく頭を撫でる。

 「いきなり来たのだから、ちゃんと準備出来てないのはしょうがないよ。それに、僕は迷惑と思ってないし、むしろ啓介さんに感謝してる位なんだから」

 自分の思っている事が指摘された事に、驚いた表情を浮かべる舞奈に、大河は優しく微笑む。

 「僕だって、あんな事があった舞奈を一人にしておきたくなかったんだ。できれば、僕の家に連れて行きたいと思っていたからね」

 大河はぎゅっと舞奈を抱きしめる。

 「けれど、そんな事は無理だと思っていた。本当なら、舞奈の家族の事も、立場も忘れて、舞奈を僕の傍に置いておきたいんだ・・・」

 大河の切なそうな声。

 舞奈は、『エゴイスト』に現れた時の、血相をかかえた大河を思い出す。

 舞奈は、自分の事しか考えてなかった事を恥じる。

 自分を好きでいてくれるからこそ、舞奈が危なかった時に何も出来なかった苦しみがあったに違いない。

 舞奈は、今その事に気がついた。

 (先生も、怖くて、苦しかったんだ・・・)

 舞奈は、ぎゅっと大河を抱きしめる。



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