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その瞳に…
第28章 大人の対応
 「やっぱり、彼がそうなのね」

 その言葉に、舞奈は小さくコクンと頷く。

 渡辺を見るまでは、あまり恐怖心など沸いてはいなかったが、やはり実際に会うと嫌悪感と共に、恐怖心が沸いてくる。

 そして、渡辺が自分を見ていると解ると、何故か体中を嫌な視線が這い回っているような感覚にも陥る。

 「・・・舞奈さん、落ち着いて。大丈夫よ、私がいるわ」

 早百合にぽんぽんと背中を叩かれ、とても優しい声で話しかけられる。

 しかし、それでも舞奈はすぐには落ち着く事が出来ずにおり、硬い表情のまま、俯いたままだった。

 「舞奈さん。ね、山村さんの事を思ってみて。どんな事でもいいから」

 (先生の―――――――――)

 早百合からそう言われ、舞奈はゆっくりと大河の事を思う。

 恐怖の為、ドクドクと全身を脈打つ鼓動と短くなる呼吸を抑えるかの様に、自身の体をぎゅっと抱きしめながら。

 自分を抱きしめてくれる体、耳をくすぐる優しい声、そして、自分が真っ先に虜になった瞳―――――――――

 出会ってから知った大河の全てを舞奈は、一つ一つゆっくりと思い出す。

 すると、恐怖心で固まっていた体が解れ、鼓動が段々と落ち着いてくるのを舞奈は感じた。

 「・・・もう、大丈夫そうね」

 舞奈の表情が戻ったのを確認した早百合は、ほっとしたように声をかける。

 「・・・はい。もう大丈夫です」

 舞奈は自分でもこんなにすぐ恐怖心が薄れたのが驚いたが、それでも落ち着いたと言う事を伝える為に、早百合に笑顔を見せる。

 「良かったわ。ごめんなさい、私の配慮不足で貴女に不安を与えてしまって」

 心構えが無いまま、渡辺がいる事を教えたことにより、昨日の今日でまだ不安があるはずの舞奈に、渡辺を見せてしまったことを早百合は詫びる。

 
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