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その瞳に…
第29章 大人と子供
 「さっき電話先で、君が拗ねたような事を言っていただろう?」

 舞奈は、自分が先ほど電話越しに言った言葉を思い出すが、それが大河に拗ねていると思われてしまっていたのがなんとなく恥ずかしくなり、無言で頷く。

 「なんとなくだけれどね。その話は電話でするんじゃなく、できれば顔を合わせて話したいと思ってね。それに、今日も舞奈がアレを見てまた恐怖心が蘇ってないかも気になっていたしね」

 「え?それだけの為に、呼んでくれたんですか?」

 「そう。僕はね、なるべく大切な事は電話で済ませず、直接話したい方なんだ。・・・嫌だった?」

 優しい笑みを浮かべながら問いかける大河に、舞奈はブンブンと首を横に振ったあと、大河に負けじと微笑みを浮かべた。

 「嫌なんて事ないです。先生の傍にいれて嬉しいし、私もできたら電話じゃ嫌だったから・・・」

 電話だと、相手の顔が見えない分、声でしか相手の感情が解らない。

 それが、相手の事を話して貰う時はなおさらだ。

 ちゃんと顔をみて、相手の声だけでなく、表情で感情を受け止めたい。

 舞奈は、大河もそういうタイプなのだと自分との共通の部分が見つかり嬉しくなる。

 「さて、聞きたい事があるのなら言ってごらん。時間はたっぷりある。舞奈がもう拗ねない様に、全部話してあげるよ」

 拗ねていた訳じゃなく、自分で勝手に落ち込んでいただけなのだが、舞奈はあえて訂正せずに質問を始めた。

 「あの、じゃあ・・・早百合さんから聞いた、SMクラブの店長さんとはどんな知り合いなんですか?」

 舞奈は取りあえず、一番気になっていたSMクラブの店長さんの事をまず聞いた。

 大人になれば色々な職業の知り合いが増えるだろうが、何故そんな人と知り合いなのか、聞いたときからずっと気になっていたからだ。
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