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その瞳に…
第30章 SとM
 成る程、と舞奈は思う反面、そうは言っても、それは性癖を変える程の事なのだろうか?と疑ってしまう。

 少し納得していない表情をした舞奈を見て、大河はクスリと笑いを漏らすも、話を続けた。

 「後はね、人間は気持ちを言葉にすると、脳がそれを正しいと思う様にも出来ている。・・・たとえば、少し苦手な動物をずっと好きだと繰り返し言っていくうちに、本当に好きになってしまう、とかね」

 大河は、押し倒した舞奈を起こしながら、今度は背中を胸に預ける様に自分の上に座らせる。

 「だから、程度はあるけれど痛みを『痛い』と口にせず、『気持ちいい』と口にしてくうちに、段々それが気持ちよくなっていくことだってある」

 その言葉に心当たりがあった、舞奈はドキリとしてしまう。

 自分で始めて買ったクリトリス用のクリップ。

 あれを初めにつけた時、痛みしか伴わなかった。

 けれど、自身でこの痛みがそのうち気持ちよくなる、そう思いながら何度もつけたりしていくと、どんどんそれが快楽に変わっていった。

 今は、あの痛みが無いと気持ち良く感じられない程に。

 それは自分がアブノーマルなM属性だからだと、舞奈は思っていた。

 けれど、きっと痛いとしか思っていなかったら、あれは痛いままだったのかもしれない。

 心でそう思っていただけで痛みが快楽に変わるのだから、言葉にしたらもっと自分を騙し、気持ちを変える事なんて容易いのだろう。

 その時の気持ちを思い出し、舞奈はゾクリと体を反応させる。

 (あ・・・ヤバ・・・)

 大河の温もりを感じながら、その時の事を考えてしまい疼く体に舞奈は困惑してしまう。

 何とか体の疼きを抑えようと、大河の話しに集中しようとするが、高鳴る鼓動はドンドン舞奈の体を欲情させていった。
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