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その瞳に…
第30章 SとM
 抱きしめた腕から、舞奈の早くなる鼓動を感じた大河は、とても楽しそうにほくそ笑む。

 顔が見えないが、高ぶる鼓動と耳まで赤くなっている舞奈を見て、今舞奈が欲情しているのはすぐに気がついた。

 本当なら、今すぐにでも押し倒したい気分に駆られるが、もう少し焦らし、疼く体に困惑する舞奈を見たい為、気がつかないフリをして話を続けた。

 「後、人間の体はね、一度とてつもない快楽を知ってしまうと、それを欲するようになってしまう。焦らし、我慢させ、相手が泣いて懇願した時に与える快楽は、何物にも代えがたい快楽となる・・・」

 大河はそっと、舞奈の耳元に唇を寄せ、低く甘い声で囁く。

 「君は、それをもうその体で知っていると思うけれどね」

 「っあ・・・」

 大河の囁きに、舞奈はビクンと体を反応させ、甘い吐息を吐き出す。

 その反応が楽しかったのか、大河はクスリと笑いを零し、ぎゅっと強く舞奈を抱きしめた。

 「SEXの気持ち良さを知ってしまうと、自慰行為をし、快感を得てもそれには届かず、物足りなく感じてしまう。・・・違う?」

 その問いかけに、舞奈は全身が真っ赤になったと思う位に、恥ずかしさがこみ上げてきた。

 それは、大河から電話が来る前に自分が考えていた事だったからだ。

 自分でする時は、まだクリトリスだけなのは、自分の指では奥まで届かないし、きっとさらに大河を求めてしまう事を解っていたから。

 それならば、欲情した体を沈める為だけに、いつも通りの快感で済まそうと思っていた。

 けれど、そこまで大河がお見通しだった事に、舞奈は羞恥心で頭の中が一杯になってしまい、大河の質問に答えず、俯くしか出来ずにいた。

 
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