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その瞳に…
第38章 冬休み
 「は~。先生の元カノ、きょーれつ」

 下川が見えなくなった後、絵麻は呆れた声でポツリと溢す。

 「佐々木さん」

 すると、大河が注意するように、強めに絵麻の名を呼ぶが、絵麻はペロっと舌を出し、誤魔化した。

 「取りあえず、駅まで送るから今日の事は気にしないで帰りなさい」

 絵麻の態度に小さく呆れたため息を溢した大河は、舞奈の肩にそっと触れ、帰るよう促す。

 舞奈はその大河の熱を感じた瞬間、無意識の内にグイっと大河のネクタイを思い切り引っ張り、そっとキスをする。

 「!?」

 「え・・・?」

 舞奈の行動に、絵麻と美和は口をあんぐり開け、声の無い叫びをし、大河は驚きのあまり目を見張る。

 「舞・・・奈・・・?」

 あまりの行動に思考が追いついていない大河は、つい舞奈を名前で呼んでしまう。

 舞奈は大河のその声を聞くと、もう一度大河にキスをし、ぎゅっと腕に抱きつく。

 「っ・・・先生は・・・先生は私のなんです!あんな人に触らせないでください・・・」

 舞奈が抱きついた腕は、先ほど下川が触れていた腕だった。

 今まで、他の生徒が大河に触れている瞬間は何度も見た事がある。

 栄子も、大河の腕にだが触れていた。

 けれど、それらに一切の嫉妬など湧くことが無く、何故今回だけこんなにも下川が触れたのが嫌だったのか、舞奈すらも解っていない。

 しかし、嫉妬と言う感情を舞奈は抑えきれず、絵麻達がいるにも関わらず大河に抱きつき感情を吐き出す。

 子供っぽいと思われてもいい、それでも、大河は自分の大切で、大好きな人なんだと言わんばかりに腕に力を込め、大河に抱きつく。

 「舞奈・・・」

 大河は舞奈の行動に戸惑うも、その言葉に嬉しさを感じる。

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