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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔



 以前の杏璃なら“優しくて気遣いまで出来る最高の彼氏!”と浮かれていただろう行動。だが本性を知る杏璃には、“良い彼氏アピール”としか映らない。


「あり、がと……」


 杏璃も周囲の手前、礼を言う。とてもぎこちないものになってしまったが。


「いいえ。それで? 二人が何話してたか、僕にも教えてよ」


 司は王子スマイルを浮かべてはいるが、目は一切笑っていない。


 杏璃の背中に寒気が走る。きっと彼は杏璃が由奈に秘密を暴露していないか勘ぐっているのだろう。


「やっだー、司くんってば! ほんっと杏璃ちゃんのことが好きなんだね!」


 由奈が大袈裟なくらいに明るく笑い飛ばす。


「あはは、解る? 杏璃のことは何でも知っておきたくて」


「うんうん、そうだよねー! でーも! ご心配なく! 杏璃ちゃんも司くんのこと、同じくらい好きなんだよねー? 今だって惚気聞かされちゃった!」


「そうなの? それにしては浮かない顔してるみたいだけど」


「それ! 私も気になっちゃって聞いたらね。司くんがモッテモテだから、他の子に盗られちゃわないか心配って話しくれたのよー」


 上手い言い訳だ。由奈の臨機応変な対応に杏璃はただただ感心する。







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