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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔



「へー、杏璃がそんな心配を……」


 未だ晴れてない疑いの目を向けられ、杏璃は慌てて頷く。


「大丈夫。僕は杏璃一筋だから。杏璃が一番知ってるでしょ?」


「う、うん」


「わぁ! 公然惚気! ごちそうさまです」


 秘密を知っているとの怪しさをまったく見せない由奈は、手を合わせて軽く頭を下げる。


 そんな彼女に杏璃は、土に額を擦りつけて感謝を述べたい思いになる。


「やだなぁ、由奈ちゃん。あんまりからかわないでよ」


 照れた表情を浮かべた司は、野菜を抱えてバーベキューコンロの所へと戻っていった。


 その背を見送り、杏璃と由奈から同時に深い溜め息が吐かれた。


 お互い目配せし合い、調理場へ戻る。何だかもう、このまま帰宅したいくらい疲れた。


「……ありゃ相当手強いわ」


 由奈のぼやきに無言で頷く。


 それからは危険な会話はせず、同級生や先輩たちとの会話に混ざったりして過ごし、それぞれの準備を終えると部長の「乾杯」の合図で食事が始まった。


 話すのは他愛もないこと。夏休みの予定だったり、ファッションのことだったり、恋愛のことだったり。


 その間も杏璃は司の隣にいなければならず、いくら考えないようにしていても、苦痛が司側からじわりじわりと肌に虫が這うような気持ち悪さを覚えて。


 充分に楽しめたと言えないまま、陽が暮れていった。








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