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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔




 夜になっても宴会は続き、ゴミ袋に詰まる酒の空き缶は山のようになる。参加者は男女合わせて総勢十五名で、それも頷ける。


 酔いが回った男性は上半身裸になり、両手に花火を持って駆け回り。


 キス魔の女性の先輩は隣に座る友人の頬にキスをして、上機嫌で笑い転げている。


 騒がしさに乗じて司が耳打ちしてきた。


「ちょっと来て」


「え、なんで」


 この時間になってどうにか司の存在を思考から疎外して、由奈を含める友人たちとの会話に意識を置いていたのに。


「いいから」


 杏璃には拒否権はないとばかりの迫力。嫌々ながら簡易椅子から腰を上げて司に付いていく。


 去り際に由奈が「大丈夫?」と音声は出さずに唇だけ動かしていた。杏璃はどこへ連れていかれるかも知れないので、曖昧に笑って応えた。


 そっと抜け出しても大勢の目があり、「どこ行くんだ、コノヤロー! 青姦かぁ!?」と男のふざけた叫びと馬鹿笑いを背中に受ける。


 さらには茶化す指笛や下品な台詞までもが飛び交い、杏璃は辟易する。


 本当の恋人だったなら、照れたり、二人きりになったあとの展開を期待していたかもしれないのだけれど。







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