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want to be ...【短編集】
第6章 温泉旅行 2日目
「だって、美咲さんになったら心労で死んじゃうよ。
あんなに溺愛されて…心臓いくつあっても足りないもん」
…んー?聞き捨てならねぇんだが。
「…何、杏奈ちゃん…俺の溺愛は足りなかったかな?
そっかぁ、そうなのかー…欲張りだなー?
じゃあもっとベタベタに甘やかした方がいいかなぁ…」
「…え゛!?」
「まだ足りないんだー?」
「…っ、そっ、そんなんじゃ!…っな、」
…い訳じゃない、って小さく聞こえて、マジでこの場で押し倒してやろうかと思ってしまった。
杏奈。
…離してやらないから。
絶対に。
「…分かった。お望み通り、今日も明日も明後日も
10年後も50年後もベッタベタに甘やかしてやる」
「え!?…う、…、嬉しい。…け、ど」
「何だよ、まだ不満か?」
真っ赤な顔で、若干涙目な杏奈は、恐ろしい事を口にしてくれた。
「…あ、甘やかしてくれるのは、すっごく嬉しい。
あの…でも、ね?やっぱり結婚して何年も経ったら
お互いの存在が当たり前になって、
ドキドキとかしなくなるんじゃないかなって思うの。
…そ、それ…で。えっと…」
「…何。俺はそんな事はないと思うんだけど」
すると小さく首を振って、杏奈は俺を見上げた。
「ドキドキはしなくなってもいい。けど…
…し、死ぬまで、あたしの傍にずっといてほしい。
死ぬまで、蒼汰と夫婦でいたい」
「…っ」
「それならあたしは、世界一幸せだよ」
ここが足湯じゃなかったら絶対押し倒してた。
ここに人がいなかったら…間違いなく押し倒してた。
杏奈への好きが、毎日増えていく。
俺の思いは溢れて溢れて、その内湖でも出来そうだ。
大樹が美咲を有り得ないくらい溺愛してるのを見て、近くでずっと見てた俺はいつも呆れてたけど、今分かった。
愛って、運命って、こういう事を言うのかもな。
例え、俺達の始まり方がおかしくても。
一度離れたとしても。
こうして今、結婚してまで一緒にいるのは、俺にとって杏奈が、杏奈にとって俺が運命の相手だからじゃないのか。
だから大樹も美咲を溺愛するんだ。
俺も杏奈に溺愛してて、甘やかしたいんだ。