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兄の狂気
第3章 誘 惑









瞳SIDE


「うっわー、どしゃ降りじゃん」


「ほんとだね…」


ある日。


たまたまそこにいた、って理由で
先生に雑用を頼まれたあたしと
同じクラスの諒真くんは、先生に連れられて
研究室でホッチキス作業をしていた。


それを終えて、


「ありがとう、気を付けろよ〜」


って先生の言葉を背に研究室を出たら、
外はバケツの水をひっくり返したような
雨が降っていて。


「あっちゃー…。ももちゃんどうする?
俺一応傘あるんだけど、一緒入ってく?」


「んー…」


どうしよう、お言葉に甘えようかな…


と思ってると。


「…あっ!え!?あ、待ってももちゃん、
今何時か分かる!?」


「へっ?…えと、あ、17時40分…」


「やっべーバイトなの忘れてた!」


「ええっ!」


「うわマッハで行かねぇと絶対間に合わねー!
ごめんももちゃん、俺行くわ!今度一緒に帰ろ!」


「う、うん!気を付けてねっ」


「ありがとっ」


笑顔を浮かべた諒真くんに手を振り、
相変わらず嵐のような人だなあと思う。


降りしきる雨を見ながら廊下を歩き、
ロッカーへ向かう。


置き傘ある筈だから大丈夫だよね。


そう思いながらロッカーの扉を開けたけど。


「…あ、あれ」


ない…


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