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十字路の上で
第3章 友情と愛情

大学の最寄り駅周辺。
立ち並ぶビルの一つの中に、学生でも入りやすいフードも充実した“Truth”というバーがある。
薄暗い照明の中、静かに流れる洋楽がゆっくりとした時間を演出する。
時刻は19時を少し回ったところ。
夜の約束まで時間があったあたしは、颯太と2人で肩を並べてカウンターに座っていた。
今日の出来事の話題が落ち着いて注文したカクテルが半分以下になったころ、颯太がおつまみにフォークを突き刺しながら尋ねた。
「ねぇ、アンタ達って何で付き合わないの?」
カウンターの中のバーテンが手際よく他の客の酒を作っているのを眺めながら、答えが分かっている質問を返す。
「あんた達って?」
「アンタと邦彦」
持ち上げたグラスの中で、カランと氷が音を立てた。
「なんでって。好きじゃないから」
「真実はそうでも、邦彦はそうじゃないでしょ」
「え、邦彦ってあたしのこと好きなの?」
「気付いてるでしょ」
グラスの中の氷に視線を落とす。
「熱い友情だよ」
「周りにはそう見えたとしても、自分への好意に気付かないほど、アンタは馬鹿で鈍感な女じゃないでしょ」
「あら、褒められちゃった」
「茶化さない」
あたしは口元に手を当てて小さく笑う。
颯太は誰よりも、人の気持ちに敏感だった。
颯太が溜息をついて煙草に火をつける。
あたしはユラユラと揺れる煙を黙って見つめた。
「アンタ達っていつから友達なんだっけ?」
「…小5?」
「10年の付き合いなわけ?」
吸い込んだ煙を吐き出しながら「長…」と颯太が呟く。
あたしもそう思う。

