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十字路の上で
第3章 友情と愛情

昔を思い出し、思わず口元に笑みが浮かぶ。
「邦彦いまと違って熱血少年でさ、すごい負けず嫌いで、何かと張り合って来たんだよね」
テストの点、絵画コンクール、運動会の徒競走や通っていたスイミング。
中学生にあがるまで、何でもかんでも競い合って来た。
「へぇー。今の邦彦からは想像つかない。めちゃくちゃドライな男なのに。まぁ、それが今の邦彦の魅力だけど」
「うん、カッコイイのにね。早く彼女作ればいいのに」
頷くあたしを、颯太が少し非難を込めた目で見る。
「真実…アンタ残酷」
「だって、もったいないじゃない」
「邦彦が彼女を作らないのは、アンタのことが好きだからでしょ」
「ちがうってば」
「10年の間で、そういう雰囲気になったことはなかったの?」
「ないわよ。ただの腐れ縁の幼馴染み」
「邦彦から告られたことは?」
「ない。ホントに友情だもん」
「…邦彦も意気地なしだね」
苦笑する。
「そもそもあたし好きな人いるし。邦彦もずっと知ってるからね」
「その人とは遠距離なんだっけ?」
「…うん」
颯太の言葉にあたしは曖昧に微笑んだ。
グラスが空になり、颯太がもう一杯同じものをバーテンに頼んだのでそれに続く。
「でも、邦彦だってそれなりに女の子と遊んでるんでしょ?」
「さぁ?見たことも聞いたこともないけど」
驚いて颯太を見る。
「え?ほんとに?」
「だから言ってるんじゃん」
あたしにはそういう話や場面を見せないようにしているだけだと思っていたが、颯太まで知らないとは。
本当に何もないのか、それとも私と同じように上手く立ち回っているのか。
重く鬱陶しい気持ちと、どこか安心するような気持ち。勝手な自分の心に嫌悪感が広がる。

