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曖昧なままに
第12章 波乱の再会
 早朝のファミレス――。

「……」

 向き合って座っている、俺と愛美。彼女はやや俯き、言葉もなく鎮座している。

 俺は愛美から窓の外へと視線を移し、コーヒーを一口飲み――そして呟く。

「今日も、いい天気だね」

 朝陽が眩しい、今日も晴天らしいが……。

「……」

 しかし愛美はそれに一切の反応を示さずに、単なる独り言と化した俺の言葉は空気に中に溶けて消えた。

 俺はふっと小さなため息を吐くと、上着のポケットを探る。そうして取り出した財布を、改めて愛美に差し出す。

「とりあえず、コレ――返しておくね」

「……!」

 愛美は微かにぴくっと肩を揺らすと、恐る恐る手を伸ばした。そして両手で握りしめて、財布をじっと見つめている。

 今、前に居る彼女は、俺の知っている愛美に戻っていた。

 只――何処か気まずそうに、黙し続けている。その理由は、俺の前で豹変した姿を見せた為か。或いは失禁したことを、気に病んでのこと。それともそれらを含め、様々な感情が去来しいるのかもしれない。

 だがもしそれらを恥ずかしく感じているとしたら、今更この俺がどうこう思う筈もなかった。これでもかと言う程の痴態を、俺は彼女の十倍以上も晒し続けているのである。

 最も――突然に職場を訪ねた俺への、非難の気持ちであったとしても、全く不思議ではあるまいが……。

「そのまま、耳だけ傾けてくれてれば、いいんだけど――とりあえず、俺が伝えたかったことを、話させてもらうね」

 当面、彼女が喋り出すまで、俺は自分の想いから先に語ることにした。

「……」

 愛美はまだ押し黙り、頷こうともしていない。それにめげることなく、俺は言葉を続けることにした。忽然として愛美が去ったことにより、宙ぶらりんとなっていた、俺の愛美に対する気持ちの部分を――。

「まず最初に、俺が愛美に感謝していること……。俺は常に孤独に苛まれ、うつ伏せに毎日をずるずると生きていた。愛美と会うことができて、そんな俺も少し変われたんだと思う。だから――ありがとう。この気持ちを改めて、伝えたかった」

「……」

 相変わらず黙っていたが、愛美は肩を窄めると、少しだけ照れたようにも見えた。

「そして、もう一つは――俺が愛美に詫びておきたいって、そう思ってること」

「――!」

 それを聞き、愛美はようやくその顔を上げる。
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