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Dolls…
第12章 ゆるやかな崩壊

相変わらず気配も感じさせずどこからともなく現れる神出鬼没な人だな。

だけど、椎葉さんのこの登場にもだいぶ慣れた。

よほど、私を驚かすのが好きみたいだ。


私の目の前まで歩いてきた椎葉さん。


「…あの男は?」

「シュウちゃんなら、今お風呂に…」

ハウスキーパーさんが溜めてくれたであろうお湯の張った湯船に浸かってるはずだ。

よく見ると、椎葉さんの手には真っ黒な布が握られている。

「あいつの着替え。俺のサイズだからあいつには少し大きいかもな」

確かに、180cm以上ありそうな椎葉さんと170cm後半のシュウちゃん。

身長も体型も全然違うし、シュウちゃんには大きいかも。

でも、こうやって着替えを用意してくれるだけでも有り難い。


「あ、ありがとうございます」


よかった…。

椎葉さんは私の幼馴染みのシュウちゃんを歓迎してくれてるみたいだ。

さっきはちょっと怖かったけど、椎葉さんはただ無愛想なだけなのかも知れない。

だけど、椎葉さんは私が思ってるほど怖い人じゃないのかも知れないな。

「あの、椎葉さん。今日はありがとうございます。シュウちゃんの事…」

シュウちゃんを受け入れてくれたこと、シュウちゃんの為にいろいろ用意してくれたこと。

まさか、椎葉さんがこんなに優しい人だなんて思ってなかった。

椎葉さんにお礼を言うなんて何だか恥ずかしいけど…、だけど、それぐらいに嬉しかった。


すると、椎葉さんは腕を組ながら詰まらなそうに壁にトンッと背中を預け軽く俯いている。




私も何だか気恥ずかしくて俯いてしまってる。

この間までの気まずさも重なって余計に恥ずかしくて、顔は未だに見れないけど━━━━━━









クスクス…


















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