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Dolls…
第15章 その愛、凶器につき
「お前にとってあの男は、そこまで…っ」

「え…?」



シュウちゃんの腕が私の肩を掴んで、優しく自分の方へと引き寄せた。

そして、私の体を優しく、まるで真綿のように包み込んでくれた。

シュウちゃんの腕の中、こんなに広かったんだ。

逞しくて、強くて、びくともしない。

だけど…、何か物悲しげに微かに震えている。



「ごめんね、シュウちゃん…」

「…辛くなったら、いつでも帰って来い。待ってるから…っ」



歯を食い縛りながら涙を必死に堪えてるような声が聞こえた。



どうしてここを離れられないのか自分でもわからない。

わからないけど、そんな私の気持ちを察してくれたかのようなシュウちゃんの心。

そんなシュウちゃんの優しさを全身で感じながら心の中で何度も呟いた。

壊れた蓄音機のように、何度も何度も。






ごめんなさい。

ありがとう。


















━━━━━キィッ

「シュウちゃんを、送って来ました…」

「…そうか」



玄関先までシュウちゃんを見送った私は、再び椎葉さんの待つ部屋へと舞い戻った。

外の天気は落ち着いていて空には星空が広がっていた。

もう天気が崩れることはないだろう。

今なら徒歩で下山して上手くすればタクシーも捕まるだろう。



部屋に戻ると椎葉さんはベッドの縁に腰を下ろし座り込んだまま。

さっきの体勢と変わっていなかった。


けど、どうしよう…。

勢いと言うか何と言うか…、ここに残るって言っちゃったけど会話が見つからない。

本当は言いたいことはいっぱいあるのに…っ。


「…どうして戻った?」

「え?」


ドアの前でオロオロする私を余所に先に沈黙を破ったのは椎葉さんの方だった。


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