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Dolls…
第16章 誘惑の果て
ここは椎葉さんの屋敷なのだから椎葉さんがこの部屋にいたって不思議はない。

いろいろ変なやりとりはあったけど、安藤さんの事もちゃんと案内したし

それに、勝手な事をした私を気にしてないかのような笑顔を浮かべてるし…。

「いつまで突っ立ってんだ?こっち来い」

「え?あ…」

「ここはお前の部屋だろ?」


お前の部屋…?

いつの間にか、椎葉さんの屋敷の中に私の居場所が出来ている。

私がこの部屋に居続けたせいもあるんだろうけど

自分の知らない所で他人の家の中にいつの間にか自分の居場所が出来てるなんて何だか不思議な気分だ。

認められたような気がして嬉しいようなくすぐったいような気分だった。



だけど━━━━…




「早く来いよ…」

「………あの」



━━━━━…ゾクッ





「早く…」




だけど、笑ってるはずの椎葉さんの目が怖い。




笑ってるはずなのに、目の奥が笑ってない。

まるで、ブラックホールのように底無しの暗い闇。





中と外、その中間のドアに立ったまま動けなくなってしまった。

椎葉さんの瞳が怖くて、このまま椎葉さんの言う通り椎葉さんの側に言ったら…


「どうした?ほら…」

「あ…っ」


足がすくむ。

う、動けない…。


「椿…?」

「あ…、ご、ごめんなさ…」

椎葉さんの声色を聞きながら、無意識のうちに謝罪の言葉が口をついた。

「何で謝る?」

「あの…」

ここに来て、何日も椎葉さんと過ごしてるのだからわかる。

どんなに笑顔を取り繕ってても、椎葉さんの本音はきっと怒ってる。

そんな小さな変化をも感じ取ってしまうほど私は椎葉さんのそばにいるし、無意識のうちに謝る癖までついてしまったようだ。







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