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Dolls…
第19章 泣きながら、あなたを…




奈々さんと比べたら私なんて、ただのダサい田舎娘。

いや、奈々さんじゃなくても椎葉さんの事を愛し、想ってる女性は沢山いるかも知れない。

椎葉さんがその気になればどんな女性でも口説き落とせるだろう。

こんな山奥の屋敷に籠ってると見せかけて実はもう既に恋人がいるかも知れないし、お抱えの愛人ぐらいいるかも知れない。


女性なら選り取り緑の椎葉さんが私を選ぶはずなんてないし、私の失恋は決定してるようなもの。

私はただの愛玩人形。

椎葉さんにとっては、ただの人形のモデルに過ぎない。





背中の傷が痛もうが、出血が酷くなろうがそんな事はもうどうでもよかった。

ただ、安藤さんの言葉を頭から振り切ろうと必死で長く広い廊下を走った。

走って、走って、安藤さんに捕まらないように全力で走って部屋へと急いだ。


だけど、どんなに走っても

どんなに頭で否定しても

安藤さんの言葉と椎葉さんの残像は追いかけてくる。

振り払おうとしても頭にこびりついてるかのように離れない。

1度解かれた封印は耐えることなく胸に溢れ返ってる。


自分じゃどうしようもないくらいに。








━━━━━━バタンッ!!


「はぁ、はぁ、はぁ…」


部屋のドアを開けて部屋に入り、勢いよくドアを閉めた。

それは、自分の心すらも閉めるかのように。

…そんな事しても最早手遅れなのに。


「はぁ、はぁ…っ」

私の後を追いかけて安藤さんが部屋のドアをノックするんじゃないかと怖かった。

ドアに背中をつけたら傷口に触れて痛い。

腕と腰だけでドアを押さえたが安藤さんが追いかけて来てる気配はないし足音も聞こえない。



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