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Dolls…
第20章 別れの背中
安藤さんが出て行ってくれた後、クローゼットから適当な部屋着を選び急いで身に付けた。

ここに来たときに身に付けさせられた真っ黒なキャミソールワンピ。

とりあえず、適当に…、これでいいや。

他のロリータ服なんて着れないし…。

「あの…、もう大丈夫です」

ドアに向かってそう叫ぶと気まずそうな顔をした安藤さんが入って来た。


「…すいませんでした」

「いいえ」

ふっと見ると、安藤さんの顔はやや赤みを帯びていた。

っていうか、そんな顔しないでよ…。

こっちまで気まずくなってしまう。

「椿ちゃん、そういう服も似合うね」

「…あ、ありがとうございます」

わざとらしく話題を変えられて益々恥ずかしくなってしまった。

そう言えば、安藤さんはロリータ服を着た私しか見たことないんだ。

こんな普通の服を着たところなんて初めてかも…。

昨夜はバスローブだったし、まともな格好を見られてない。


「…さて、食事をどうぞ」

「…………っ」

どうぞと言われても、こんな空気の中で食事なんて…、と思ったが私の体は正直だった。

油断すれば今にも腹の虫が鳴きそうだ。

「…い、頂きます」

お腹は空いてるのに、安藤さんの顔が見れない。


安藤さんはベッドのそばのソファに腰かけている。

この部屋には食事をするためのダイニングテーブルなんてなく、ベッドのそばにある小さなテーブルぐらい。

食事をするとしたらそのテーブルに食事を準備してベッドに腰かけて食べるしかない。

だけど、ベッドの近くのソファには安藤さんが腰かけててとてもじゃないがこんな近距離で安藤さんに見られながら食事なんて緊張してしまう。

っていうか、何で安藤さんはこの部屋に止まってるの?


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