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Dolls…
第22章 遠い街角
「あ……」

椎葉さんを見つめながら声を絞り出そうとするが、声が出ない。

最後の最後、椎葉さんに伝える言葉が見つからない。

ここで何か言わなきゃ後悔する。

自分の気持ちを伝えるのはこれが最後なのに、椎葉さんの姿を脳裏に焼き付けるので必死で…、言葉が出てこない。


「あの…っ」


「そろそろ行こう、椿ちゃん!タクシー来たみたいだし、待たせちゃ悪いよ」


━━━━━っ!!



安藤さんが私の手を引っ張り椎葉さんから引き離した。

その瞬間…



「待っ…」





椎葉さんの手が私に向かって伸びた。

まるで、引き止めてくれようとしたみたいに。




だけど、後数ミリと言うところで私の腕を掴み損ねてしまった。

私の腕は椎葉さんの手に捕まることなくするりとすり抜けてしまう。



「椎葉さん…っ!」



自分で決めた事なのに、胸が引き裂かれるみたいに痛い。

安藤さんと一緒にここを出て行くと決めたのは私なのに、どうしてこんなに激しい後悔に襲われているの?



「待っ…、安藤さん、痛いっ」

私の手をグイグイ引っ張る安藤さんに付いていくと、屋敷の外には既にタクシーが到着していた。

恐らく椎葉さんがここまで迎えに来させたのだろう。

普通なら車が走って来れるような道じゃない。


「…さすが秋人。こんなところまで呼びつけるなんて」

タクシーのドライバーは車から降りていて私たちが来るのをずっと待っていたようだった。

運転席側に立ち私と安藤さんの姿が見えると私達に向かって深いお辞儀をしてくれた。

そして、運転席に乗り込み車内操作で後部席のドアを開けてくれた。





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