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Dolls…
第22章 遠い街角
「行こう、椿ちゃん」

「あ、はい…っ」


本当は、ここにいたい。

椎葉さんの傍にいたい。

最後の最後に椎葉さんの顔を見たせいで決心が揺らいでしまった。

最後に私に向かって伸ばしてくれた手。

あれは…、私の気のせいなんかじゃなかった。

私を引き止めようとしてくれていた…。


返事をしたにも関わらすタクシーに乗り込めずモタモタする私。

その背中に椎葉さんの視線を感じる。


椎葉さん…っ。


「…ここに残っても辛いだけでしょ?」




…そうだ。

私は、椎葉さんに嫌われてしまった。

椎葉さんの興味を無くさせた。

だから旅立つと決めた。

ここに残りたいけど、椎葉さんはそれを望んでない。

好きなとこへ行けとまで言われてしまったんだ。

さっき差し伸べてくれた手も、やっぱり私の勘違いかも知れない…。


余計な期待はもうしないと決めたんだ。

期待して、裏切られて、傷つくのはもう嫌だ。

裏切られて嫌われて、何度も何度も椎葉さんを失う気持ちを味わいたくない。



気づくと私の足は安藤さんと共にタクシーの後部席に乗り込んでいた。

もし今、椎葉さんの方を振り返ったら…、今度こそ後戻り出来なくなる。

椎葉さんの元に駆け出してしまいそうになる。


「あ、運転手さん…、行き先は、えっと…」

「椎葉様から聞いています。安藤様のご自宅で宜しいんですね?」

「はい。とりあえず山を下りてください。後は口頭で道案内しますから」


ブォンッと鳴り響いた車のエンジン音。

いよいよ本当に出発。

椎葉さんとのお別れだ。







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