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Dolls…
第22章 遠い街角
椎葉さん…、椎葉さん…、椎葉さん…。







椎葉さん…、大好き…。















「…ち、くしょ…っ。仕事なんかじゃ、気持ちはおさまらねぇってのに…っ」


























車は山奥を抜けて民家のある道へ出た。

ここへ来るときに見た、見覚えのある家が建ち並んでいる。

どこか懐かしさを感じる街並みだ。

「はぁ…、やっと民家のある道に出たー!山奥って何か不気味だよね」

「そ、ですね…」

建ち並ぶ民家を眺めながら私の心はまるで宙に浮いてるような気分だった。

これが普通…。

これが普通の日常の光景なんだ。

椎葉さんと過ごしたあの日々がまるで夢のように感じた。

今まで私は夢の中にでもいたんじゃないかと思うぐらい。


民家が建ち並ぶ中に買い物帰りの女性や楽しそうに遊ぶ子供の姿も見える。


その風景を見ながら私の心は徐々に元に戻り始めていた。

これが普通なのだ、と。

これが私の生きる世界なのだ、と。




「運転手さん、このまま市街の方へ出て貰えます?僕の自宅はそっち方面なんです」

「はい、わかりました」



安藤さんと運転手さんの会話を聞きながらハッとした。

市街方面って…、そこは私の家の方角じゃない。

市街って、私のアパートとは真逆だ。

「あ、あの…、安藤さん…っ!?」

「ん?何?」


私を見ながらニコリと笑う安藤さんの表情には一片の迷いも戸惑いもない。


ちょ、ちょっと待って…、これってもしかして…?

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