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第25章 最後の真実

「椎葉さん…、さっきの制服…」

って、聞くだけ無駄だ。

何と無く予想出来るけど…。

「あのトラックの中で寝てる業者に返しといた」

「…訴えられますよ」

「現金で10万程包んでポケットに忍ばせといたから大丈夫だろ」

相変わらずお金に物を言わせる人だ…、と呆れていると車のエンジンがブルンッとかかった。

閑静な住宅街に似つかわしくない高級車が徐行運転で発進する。

緩やかに揺れる車内の振動を感じながら私の心は幸せに満ちていた。


座席に寝転びながら見える椎葉さんの後ろ姿。

サラサラの襟足の髪の毛、ハンドルを握る大きな手、逞しい肩。

車内に広がる椎葉さんのムスクの香り。

その1つ1つが椎葉さんの元に帰れたのだと物語ってるみたいで嬉しくて、目が離せなかった。


椎葉さんの後ろ姿を眺めつつ窓の外を見ると…、空には星空が広がっていた。

何日かぶりに見上げた夜空は息を飲むほどに綺麗で、ここが都会のど真ん中だと言うことを忘れさせてくれそうだった。

すると…



「尚人から何を聞かされた？」

「え…？」

突然聞こえた椎葉さんの声。

いきなりの事で頭が回らず"え？"と聞き返してしまったけど

「尚人から何を聞かされた？どんな話をした？」

「どんな…、って」


私が安藤さんから聞いたのは、椎葉さんはお父さんの後を継いで人形師になったこと。

そのお父さんは仕事人間で病弱だったお母さんのお見舞いにも行かなかったこと。

そして、椎葉さんのお母さんは亡くなって…。

お母さんのお見舞いにも行かなかったお父さんの事を椎葉さんは未だに怨んでる。

大体だけどこんな事を聞かされた。


だけど、私の口から椎葉さんに伝えるのが怖い。

ここまで知ってしまった私の事を椎葉さんはどう思うだろう。