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タンバリンでできたオーロラ
第36章 セキュリティ・システム
読心機は誰でも買うことができる。
二千円もしない。家電量販店やコンビニで手に入る。

そして、その用途は他人の心を読むためではなく、自分の設定したパスワードがちゃんと機能するかどうかの確認の為に使われる。

自分の読心機を使って、自分の心を読もうとして――「読み取れません」のメッセージを確認し、安心する――そのためだけに。
一度パスワードを解除して、読心機に心を読み取らせ、それから新たなパスワードを設定する。人によって頻度は違えど、こうして一定の頻度でパスワードを更新するのだ。

そうして人間社会は以前と同じような落ち着きを保ち続けた。

変わったことといえば、動物関係の研究や獣医学が発展したことだ。ペットと飼い主のコミュニケーションもより親密になった。
また、犯罪捜査においては、冤罪の証明や、偽証を暴くことに読心機は使われている。

人の心を完全に読み取る技術を得ても、結局私たちは、昔とそう変わらない生活を送っていたのだ。

誰も、自ら望んで自分の心を他人に覗かせたりはしたくない。
一方的に心の中を知られてよいのは、動物や犯罪者ということだ。

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