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新月
第5章 透吾



「おはようございます。


朝食を運びにきましたっ!」


チヨは元気に、勝手場に挨拶した。


勝手場には、中年の男女が二人いて、チヨの声に、恰幅のいい女性が振り向いた。


「はいはいよ〜。

おや、チヨ坊じゃないか。こんなに朝早くからお勤めかい??」



この小母はもう一人と、夫婦で、勝手場を任されている。

主人の方も、少し顔を上げ、チヨに笑顔を向ける。




「はい!!

今日からお世話になります!!」


「そうかい、そうかい。

無理せず、頑張りなさいよ。

たま〜に、また、お菓子をあげるから、ね?」







テルが勤めている時に、何度か内緒でお菓子をもらっていたのだ。


「フフ…。

小母さん、ありがとう。

朝食を運んでもいいかしら?」


「はいよ。いくつだね?」


「美月様のをお願いします。」


そういうと、小母は、ぴたりと動きを止めた。





「……チヨ坊、

お前さん、美月様の持っていくのかい?」


「はい。今日から身の回りのことをさせてもらうので。」



小母は、少し考えて、



「そうかい。

なんか、わかんないことがあったら、私らに聞くんだよ?」


「はい!ありがとうございます!!」



そういって、美月の御膳を受け取る。

ふと、目をやると、箸はなく、匙が置いてあった。



「小母さん、箸じゃなく、匙だけどいいの?」



「あぁ、美月様は、ね。」



小母の顔に少し陰が落ちたが、チヨは気づかなかった。


「さぁ!冷めないうちに持っていき!!

チヨ坊の分は後で取りにおいで。」


「はい。」



チヨは御膳をもつと、美月の部屋に向かった。

















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