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狐面の男に 愛されまして
第3章 狐面の男に ひきとられまして

「少し離れていなさい」
シュウがそう言うので彼女は数歩下がる。
それを確認すると
彼は狐面の奥で、フッと空気を吐き出した。
「……っ」
途端に強い風が辺りを包み、彼女は目を閉じる。
数秒して目を開けると…掃除の完了した部屋がそこに出来上がっていた。
埃っぽかった空気も一掃されている。
「入りなさい。ご飯にしよう」
促されるまま入ったそこで、ぴかぴかの床板に座り、シュウの隣で彼女は黙っていた。
お花畑では「魔法は使っていない」と話していたのに…料理に関しては、シュウは魔法を使ってくる。
フレッシュサラダ
ポタージュスープ
チキンの丸焼き
南国フルーツ盛り合わせ
それらの豪勢な料理たちが何処からともなく現れ、ちゃぶ台の上に並べられた。
「──…」
思うに…
シュウは、魔法使いに憧れる忍者なのではないだろうか。
きっと欧米の生活が憧れなんだ。
「…あれ…口に合わない?近ごろの日本は西洋料理が主流だと思ったんだけど…っ」
「…」
「スーパーに寄って、買い物してから来るべきだったかな。サチの好物を聞くのを忘れていたよ」
「…、麦チョコ」
「──え?」
「わたしの好きな食べ物…。…麦チョコ」
「……」
箸で切り分ける鶏肉は
とにかく食べ辛い。
「──…でも、これオイシイ…」
「……!」
「とっても…美味しい…」
「それなら良かった」
面を外さないシュウは、彼女と一緒に食べようとはしない。
黙々と食べる彼女の姿を隣で見守っていた。

