この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
狐面の男に 愛されまして
第5章 おムコさんに 愛されまして
手を伸ばせば、すぐそこに彼の顔が。
「……」
彼女は迷った。
迷ったけれど答えは決まっていた。
布を強く握っていた手が、前に出される。
耳の横を両手で軽く挟むようにして、彼女は狐面を上に持ち上げた。
「──…」
「さぁ…どう見る?サチ──」
面から解放された彼の顔が、二つの目が…真っ直ぐ彼女を射抜いてくる。
「面を外した僕だけれど、もしかしたらこの顔もまた《作り物》かもしれない。君を惑わせる偽物かもしれない…」
「……」
「君にはどう見える…?」
「わたしには──…シュウさんに、見える」
静かに答えた、サチ。
「そうか…」
シュウはそっと
彼女をくるむ布を左右にひらいた。
その瞬間、部屋を照らしていた灯りが、吹き消されたかのように失くなった。