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ネムリヒメ.
第23章 薔薇の刺、棘の鎖.
遠い間合いから鋭いステップで踏み込んだ望が右ストレートと、右のミドルキックの上下のコンビネーションを繰り出せば、
明らかに負傷した急所狙いのパンチを雅は曲げた左手の肘でパーリングし、ミドルを膝を曲げて持ち上げた左足のすねでカットする
さらにはローキックのフェイントから、首筋目掛けて飛んできた望のハイキックを、後ろ足を引いて上体を仰け反らせたスウェーバックでかわした雅は、空振りにバランスを崩した望に素早く右のミドルキックを返す…
あんなふざけた会話の裏で行われていた、こんなにも激しいやり取り
とにもかくにも、なかなかのセンスと互いに一歩も譲らない技のぶつけ合い
それもそのはず、このふたりにケンカの技を仕込んだのは他の誰でもない、ケンカの帝王・葵だったりするわけで
センス、技量ともに引けをとらないふたりなのだ
それ故に、葵の強さを熟知している望が、葵にガチで蹴られた雅が今どんな状況にあるかなんて最も承知しているはずなのだが、この男…本気で手加減するつもりはないらしい
「クソ雅、汚れを知らない真っ白なオレの服を汚しやがって!!」
「はぁ!? 汚れを知らねぇとか、どの口が言ってんだ。日本語正しく遣えっての、腹黒!!」
さんざん自分の服を足跡で汚した雅に向けられる、殺気を纏った鋭い視線…
さっきまでのふざけていた表情を一変させ、目の色を変える望に対して雅も瞳をギラリと光らせる