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ネムリヒメ.
第23章 薔薇の刺、棘の鎖.
それにしても、雅も雅だ
望に付き合わせられているといえども、引く気配など全く見せない雅
本来こんなことをしている場合ではないのは本人もわかっている
けして本来の目的である千隼のことを忘れているわけではないのだ
他の人間も千隼を探しているとはいえ、許される時間もあまりなければ、彼女の行方に宛てもない
となれば、さっきの口振りから望の握っているとされる情報は捨て置けないモノと判断せざるを得ないわけで
自分が知る望の性格上、口を割らせるにはヤツを満足させるのが最短手段だということを承知している故の事情である
さっさと吐かせてぇ…
そんな焦りと、少なからず急所に与えられたダメージによる痛みが雅の苛立ちと焦りを募らせる
「なぁ、クソガキ…マジでお前に構ってる時間ねぇんだよ、そろそろ本気でこい!!」
「言われなくてもそうする…クタバレ、雅!!」
一気に間合いを詰め、殺気を纏った互いの視線と拳が交差する
雅の痛めた急所である左のボディ狙いの望の右フック
それを承知で雅はストレートのボディブローを望に浴びせようと拳を繰り出す
ザシュっという音と一緒にふたつの拳が風を切った
…その時だった
「…っ…!!」
「なっ…!?」
繰り出した望の拳が雅に届くことはなく、どういうわけか空を切った
さらには強い力で捻りあげられる望の胸元
雅といえば、望の右フックの代わりにくらった強烈なサイドキックによって大きくバランスを崩す
"…わけがわからない!!"
そして次の瞬間、ふたりの耳に届いたのはバシャリという大きな水音だった