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ネムリヒメ.
第23章 薔薇の刺、棘の鎖.
「………!!」
大きな音とともに目の前に上がった大きな水飛沫
水中照明が作り出した幻想的な光によって、空中に舞った大小様々な飛沫はキラキラと光輝いていて、まるでダイヤモンドを散りばめたような光景だ
望はただただ、信じられないという驚きの表情で目に焼き付くような光景に目を見開いていた
しかし、
「お前ら…なにやってんだ…」
かけられたその声と自分の胸元を捻りあげている人物の姿を見るなり、その瞳は更に大きく見開かれ、開いた口が塞がらないままになる
怒気を含む低い声に、眉根を寄せ、人を刺すような冷たい目
ただならぬオーラ全開で目の前に立ちはだかっている男の姿に望は息をのんだ
「兄さ…ん」
そう口にする望の視線の先にあるその姿…それは我々がよく知る人物その者のものだった
光沢のある黒のシャドウストライプの細身のスーツ
深いワインレッドのシャツに合わせられた白ネクタイ
黒髪と少し長めの前髪から覗く切れ長の目
東京湾の夜景が霞む程の容姿と、人を殺せるような色気の持ち主と言えばひとりしかいないわけで…
すると、唖然とする望のすぐ下の水面からバシャッと飛沫がもう一度あがる
「っ望、てめぇ!!ふざけんじゃ…ッ…!!」
プールの冷たい水のなかから顔を出したのは雅だ
先の大きな水音と飛沫は雅がプールに落ちた音に違いはない
しかし、自分を蹴り落としたのが望ではないということは、目の前の光景から雅が理解するのにそう時間は掛からなかった