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ネムリヒメ.
第23章  薔薇の刺、棘の鎖.




「渚…さん…」


頭から水を滴らせたまま雅もその姿に息をのんだ


「望…」

「………!!」


雅の声を無視して、渚から向けられた鋭い視線に表情を強張らせる望

さっきまでの調子の良さや、ふざけていた余裕はどこへ行ってしまったのだろうか

渚が剥き出しにしている殺気にも近いオーラに圧倒され、望は言葉が出せないままでいた


ところでたった今、渚に向かって"兄さん"と口にした望

先までの雅とのやり取りから、望が誰かの弟だということは明らかではあったが、本当にコヤツはあのクールでオトナな渚の弟なんだろうか…と思われた人も少なくはないのではないだろうか

それもそのはず…

さっきから雅に"腹黒"と連呼され、その文字通り繰り返されてきた腹黒発言

言えば返される毒舌と軽口…そして悪戯っ子のような仕草…と、聖を想わせる要素が満載である


しかし、それだけではないのだ

連想させられる人物がもうひとり


"アイツに倣ってチャラチャラしてんじゃねぇよ"

雅もそう言っていたのを覚えているだろう

派手な身なりとその軽い言動…

…そう、葵だ

葵譲りとしか思えない天下一のそのチャラさ、そして派手とはいえ髪型、服装と、ファッションセンスの良さも葵を彷彿させる充分な要素である


が、しかし

長々と語っておいてなんなのだが、望は正真正銘、渚の実の弟である

では、つまりどういうことなのか

望のなかにある、譲り受けたとしか思えない強烈な聖と葵の要素はいったいなんなのか…



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