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ネムリヒメ.
第23章 薔薇の刺、棘の鎖.
「ッ…!!」
その音にまっ白だった目の前が真っ暗になった
あまりにもの衝撃に何が起きたのか頭が理解するまで時間がかかった
動けなくなったアタシの耳に薬莢の零れ落ちる音が届いて、少しして火薬の匂いが鼻を掠める
それでようやくアタシの悲鳴を掻き消したのが銃声だということを認識した
『ッ…!?おい、郁!?』
鋭い銃声は電話の向こう側の渚くんにも届いたに違いない
余りにも大きな音に少し麻痺してしまった耳に、明らかに動揺したような声が入ってくる
しかし…
「じゃ、渚…そういうことだ。聞こえただろ、立て込んでるの」
『は!?待て、まだ話…』
渚くんの声が途中で途切れて、妖しく頬笑んだオトコが携帯電話をベッドへ放り投げる
白い硝煙をあげる手のなかの拳銃
「これ…おもちゃだと思った!?」
「っ…」
カラダを貫いた衝撃と大きな音に、ずっと早鐘を打ち続けている心臓がドクドクと嫌な音を発してカラダのなかに不協和音をつくりだす
オトコは微動だにしないでいるアタシの目の前で、表情を崩すことなく慣れた様子で銃口にフッと息を吹き掛ける
撃たれ…た
しかし、弾が貫通した先はアタシではなかった
銃口から弾き出された弾が撃ち抜いたのは、すぐ側にあったフェザークッションだった
衝撃で舞い上がり、まるで雪の様に頭上から降り注ぐ真っ白な羽が、オトコの手にする武器が本物であることと、その威力の大きさを物語る